エリート御曹司と愛され束縛同居
まったく自分にあてはまらない表現。

確かに桃子さんより年齢を重ねているけれど、それが大人なのかと言われたらそうじゃない。

自分の恋愛ひとつ上手にできなくて、好きな人に素直な気持ちを伝えられず、迷って立ち止まってばかりだ。


大人なら、ひとりで大丈夫だと言うの?


そんなわけはない、今だってあの人を奪われそうで恐くてたまらないし、どうしていいかわからない。

桃子さんのようになにも武器になるものを持っていないし、なんの自信もない。ここで泣いて逃げ出さずにいるだけで精一杯だ。


私にだって遥さんしかいない。


この数日会えなくて、話ができなくてずっと寂しかった。

逃げていたせいもあり自業自得な部分は否めないのに、それでも会いたくて焦がれていた。

いつからこれほど惹かれてしまっていたのかわからない。


ただ九重遥という男性が好きだ。


皮肉にも桃子さんによって尚さら自分の気持ちを認識してしまった。

「……ごめんなさい、私には……」

できません、と言いかけた時、抑揚のない声に遮られた。

「九重副社長は今、新しいホテルのサービスに奔走しているのでしょう? 私ならあの方のお力になれると思います。今後一層華道の腕も磨くつもりですし、祖母のお弟子さん方にも九重グループのホテルを勧めています」
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