エリート御曹司と愛され束縛同居
誰より洞察力に優れた先輩は、恐らく俺の淡い初恋に気づいている。

最近では、言葉にはしないものの、なにかにつけて俺に嫉妬心を見せてくる。

『幼馴染みの域を超えている』と言いたいのが、ちょっとした言葉や仕草から、にじみ出てくる。


まったく、今さら澪との恋路を邪魔するわけでも横恋慕をするわけでもないのに。

そもそもふたりが出会うきっかけを作ったのは俺だという事実を忘れていないか?


ここまで感情表現が豊かな人だったかと驚くくらいだ。

いつも冷静沈着。

感情を完璧にコントロールし、誰もが憧れる副社長が、たったひとりの女のために調子を崩す。

さすが俺の幼馴染み、侮れないなと苦笑してしまう。


『圭太、ありがとう。きちんと遥さんと話し合って本物の婚約者になったよ』


先輩との仲が拗れていた澪が報告の電話をしてきた。

こういうところは誰よりも律義で、しっかりしている。

きっと狭量な婚約者はそれさえも心配しているだろう。

ホテルのラウンジで煽るような真似をした俺にも原因はあるのだが。

でも、大事な幼馴染みを任せるんだ、それくらいの意趣返しは許されるだろう。


「そうか、よかったな」

『圭太のおかげだよ。いつも助けてくれてありがとう』

「当たり前だろ、大事な幼馴染みなんだから。澪……幸せになれよ」


心からの餞の言葉を大事なたったひとりの“妹”に贈る。

きっとこんなにも大切にこの言葉を向ける相手は、これまでも、これからもコイツ以外にいない。
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