エリート御曹司と愛され束縛同居
「ふ、副社長、どういうつもりですか? 私なら大丈夫です。いくらなんでも皆さんの前で……!」

思わず抗議すると、すっと長い腕が伸ばされ肩を引き寄せられた。

頭をトン、と自身の肩に預けるように促され、話をまったく聞いてくれていない。

ふわりと慣れ親しんだ香りが鼻腔をくすぐる。

「……俺の呼び方が違う。飲みすぎだ。着くまで黙って寝てろ」

先程までの麗しの王子様スタイルはどこへやら、普段の調子に戻っている。しかもなぜか不機嫌だ。

「具合が悪くなるまで飲むな。いくら歓迎会だからって弱いなら断れ。また倒れたらどうするんだ」

小さく呟きながら私の髪をそっと梳く。

不愛想な言い方とは裏腹に手つきはとても優しく、胸の鼓動がうるさい。

触れた場所から伝わる高めの体温が心地いい。

この人はまだ少し威圧感があって苦手だったはずなのに、どうしてこんなにも安心するんだろう。

頭の片隅で考えながらいつの間にか意識を手離していた。
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