エリート御曹司と愛され束縛同居
「……ベッドから落ちたのか?」


心配そうな表情を浮かべて近づく彼は普段自宅で過ごしているような服装に着替えている。

髪の毛が少し濡れている様子を見ると入浴したところだったのだろうか。

整った面差しから目を逸らせずにいると、ふわりと身体が床から浮く。

気づけば横抱きに抱えられていた。

「は、遥さん?」


一体なにをしているの?


「動くな、落ちるぞ。怪我はしていないか?」

労わるような温かい声が耳に響き、胸の奥が燃えるように熱い。

「平気、です……すみません……」

羞恥で返事をするだけで精一杯だ。

心臓が壊れそうな音をたてている。

お姫様抱っこなんて兄にも圭太にも、過去の恋人にもしてもらった経験はない。

そっとまるで壊れ物を扱うような優しい手つきで私をベッドに戻し、ヘッドボードに腰を寄りかからせるようにして座らせてくれた。

ベッドサイドの私の傍らに座り、顔を覗き込んでくる。瞬時に以前熱を出した時に看病してもらった記憶が鮮明に蘇る。


ああ、私ときたらどれだけ同じような事態を繰り返しているのだろう。まさかあの日も今回もこんな風に運んでもらったの?


全身がカッと熱くなる。

「あ、あの私……」

恐る恐る口を開く。

距離が近すぎてどうしていいかわからない。

妖艶な眼差しを真っすぐに向けられる。

こんなに綺麗な容貌の男性に凝視されて居たたまれなくなる。目を逸らしたいのに視線が強すぎて逸らせない。
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