エリート御曹司と愛され束縛同居
「……気分はどうだ?」

頬に骨ばった指で触れながら問われ、その感触にぴくりと肩が跳ねる。

「……少し頭痛がしますけど大丈夫です」

「そうか、よかった」

ふわりと目尻を下げる遥さんは怒っているようには見えない。指の温もりがゆっくりと頬から離れていく。


どうしてそんな表情をするの? 怒っていないの?


「……遥さんがここまで運んでくれたんですか?」

こうなったらきちんと自分の失態を知って潔く謝罪しよう、覚悟を決めて問いかけた。

「ああ、熟睡して起きないからそのまま運んできた」

なんでもない出来事のように言われて言葉を失う。

予想はしていたけれど、改めて聞かされた衝撃の事実に頭痛がぶり返す。


不可抗力とはいえ、副社長という立場の人に一度ならず二度までも……! 


飲みすぎて熟睡してしかも運んでもらうなんて、なんたる失態、社会人失格だ。

恥ずかしさと申し訳なさで遥さんを直視できずに俯く。

「た、度々申し訳ございません……!」

ギュッと目を瞑って謝罪すると、ぽんと頭を大きな手で撫でられた。

「恋人を送るのも看病するのも当然だろ?」

当たり前のように言われて、慌てて頭を上げる。

「ダメです、私は秘書で、恋人はあくまでもただの役、フリです。なのに何度もご迷惑をかけてしまって……本当に申し訳ございません」
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