クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
※ ※ ※

 亮と出会ったのは大学だった。経済学部でマーケティング論が専門の教授のゼミに共に所属していて、先生の指導方針で違う学年だけれど月に一度合同のゼミがあって顔と名前は知っていた。

 お互いにただの顔見知り、本当にその程度。

 私は純粋に興味があってこのゼミを希望した。ところが競争率が高く、事前のレポート課題で選抜があったのは、先生の専攻分野だけが理由ではないのだと後からわかった。

 元々顔もよくて頭の回転も早い亮はゼミだけではなく、全体的に目立っていた。入学したときから同じ学部にかっこいい先輩がいるって聞いていたし。

 だから亮よりも先に私の方が彼を認識していた。そして早々(そうそう)に自分とは無縁の人だというのも悟っていた。  

 同じゼミというだけでなにも知らない友人からは羨ましがられ、彼の周りには頭も良くて綺麗な女子が自然と集まっていた。

 そんな状況からすると、下手に関わってやっかみを受けるのも御免だったから。

 そんな彼とひょんなことから大学以外の場所で出会って、私たちの関係は少しずつ変わり出した。


「谷川さん?」

 入学して、講義にも一人暮らしにも慣れてきた六月半ば。梅雨入りするかしないかの頃だった。

 思いがけない場所で声をかけられ、私の心臓は口から飛びでそうになった。

 私がいたのは大学から自転車で二十分ほどのところにある駅近くの水族館だった。これが土日ならまだしも、人の少ない平日の、さらには深海魚のコーナー。

 もう何度かここに通い詰め、お馴染みのグレーのソファに腰掛けて水槽をじっと見つめている最中のこと。まさか知り合いに会うとは微塵も想像していない。
< 11 / 143 >

この作品をシェア

pagetop