クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
まったくの想定外の事態に戸惑い、続いて相手を確認して私はさらに驚いた。
「冴木先輩……」
ゼミでも必要最低限の会話しかした覚えのない冴木亮がそこにいたから。七分丈の薄手のチェスターコートに細身の黒のスキニーパンツとシンプルだけれどお洒落に着こなしている。
対する私はオフホワイトのシフォンシャツに明るめのジーンズとあまり女子らしさが感じられない。
「ひとり?」
私の動揺など知るよしもなく、彼は気軽に話を振ってくる。慌てて立ち上がり、軽く頭を下げた。
「あ、はい。先輩は……」
尋ねかけて言葉を止める。彼のことだ。デートかなにかに違いない。
「俺もひとり」
ところが、返ってきた言葉は思いがけないもので、私は目を白黒させた。立ったままでいる私をよそに、彼は私のすぐそばまで歩み寄って来ると、悠然とソファに腰を下ろした。
長い足を組んで、私が見ていた水槽に視線を送っている。
「見てて楽しい?」
こちらに視線を寄越しもせず、彼から放たれた言葉はどこか冷めている気がした。私は正直に答える。
「はい。もしかして先輩も深海魚が好きなんですか?」
勝手に親近感を覚え明るく尋ね返すと、亮はふっと笑った。でもその笑顔はいつもの大学で見るものではなく、どこか皮肉めいていて私の胸に刺さる。
「いや、むしろ水族館とか好きじゃない。人間のエゴだろ、こんなもの」
嫌悪感がはっきりと交じった声と表情だった。深海魚のコーナーはとくに明かりが落とされ、水槽に反射したわずかな光が床に波を作っている。
薄暗い中で照らされた亮の横顔は怖いくらい綺麗で、冷たかった。
「冴木先輩……」
ゼミでも必要最低限の会話しかした覚えのない冴木亮がそこにいたから。七分丈の薄手のチェスターコートに細身の黒のスキニーパンツとシンプルだけれどお洒落に着こなしている。
対する私はオフホワイトのシフォンシャツに明るめのジーンズとあまり女子らしさが感じられない。
「ひとり?」
私の動揺など知るよしもなく、彼は気軽に話を振ってくる。慌てて立ち上がり、軽く頭を下げた。
「あ、はい。先輩は……」
尋ねかけて言葉を止める。彼のことだ。デートかなにかに違いない。
「俺もひとり」
ところが、返ってきた言葉は思いがけないもので、私は目を白黒させた。立ったままでいる私をよそに、彼は私のすぐそばまで歩み寄って来ると、悠然とソファに腰を下ろした。
長い足を組んで、私が見ていた水槽に視線を送っている。
「見てて楽しい?」
こちらに視線を寄越しもせず、彼から放たれた言葉はどこか冷めている気がした。私は正直に答える。
「はい。もしかして先輩も深海魚が好きなんですか?」
勝手に親近感を覚え明るく尋ね返すと、亮はふっと笑った。でもその笑顔はいつもの大学で見るものではなく、どこか皮肉めいていて私の胸に刺さる。
「いや、むしろ水族館とか好きじゃない。人間のエゴだろ、こんなもの」
嫌悪感がはっきりと交じった声と表情だった。深海魚のコーナーはとくに明かりが落とされ、水槽に反射したわずかな光が床に波を作っている。
薄暗い中で照らされた亮の横顔は怖いくらい綺麗で、冷たかった。