クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「そう、でしょうか」

 反論とまではいかなくても、懐疑的に私はぎこちなく返す。すると間を空けずに彼から返答があった。

「人間の手で、娯楽や経済効果を与えるものとして限られた空間で飼われているんだ。(あわ)れだろ」

 そういう見方もできるのかもしれない。でも私は勝手に言葉が口を()いて出た。

「それだけじゃないと思います!」

 今度ははっきりと意見した私に彼は意識を向けた。まっすぐに見つめられ、私は(はや)る鼓動を抑えて続ける。

「私の出身地、内陸部で海は縁遠いものだったんです。でも旅行したときに両親に初めて水族館に連れて行ってもらって、すごく感動したんです。海の中ってこんな世界が広がっているんだって」

 言いたいことを上手くまとめる余裕もなく、私は思うところをとにかく口にした。

「当たり前のようで、海を大切にしないといけないって幼心(おさなごころ)に思いました。だから、私にとって水族館って娯楽以上にすごく意味のあるものなんです!」

 論理的どころか個人的感情論を相手にぶつけ、言い切ってから私は少しだけ後悔した。彼は大きな目を丸くして、意表を突かれた面持ちだ。私はおもむろに水槽に視線を向ける。

「しかも、この水族館は稀少種も保護のために手厚く飼育していたり、生態に合わせた展示で工夫もしています。……だから少なくとも飼われている生き物にとっても悪いことばかりじゃないと思うんですけど」

 最後は歯切れ悪くなりつつ亮の方に顔を向ける。彼はどこか呆れた表情だ。
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