クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 無意識に自分の手のひらを強く握ると、亮は私の右手に自分の手を重ねてきた。 

「誰かのせいにするつもりはない。汐里を傷つけたのは俺自身だ。でも今も昔も俺にとって一番大切なのは汐里なんだ。他はいらない」

 亮が迷いなく言い切った後、部屋にはしばし沈黙が流れる。

「……私ね、亮にずっと謝りたかった」

 続けて小さく口火を切ったのは私の方だった。私も彼に伝えなければいけないことがある。今度は私が自分の想いを伝えないと。

「五年前、桑名さんの存在や亮の家の事情を突然知る形になって、戸惑ったしすごくショックだった。でも別れようと思った本当のところは、亮に対しての不信感とか傷つけられたからとか、そういうのじゃないの」

 亮はなにかを言いかけたけれど、黙って私の話を聞く姿勢を取る。引っ込めるのを許されないほどに手はしっかりと重ねられたままだ。

 私は一度唾液を飲み込んで、唇を震わせて続ける。

「怖かった。ずっと付き合っていた亮が突然、知らない人に思えて。亮と付き合ってきた関係が全部嘘みたいに感じて……」

 桑名さんへの嫉妬もあった。私よりも彼女の方が亮を知っているし、理解もできる。家柄だって申し分もない。

 私はどうなんだろう? 亮に必要とされていた? 愛されていた?

 突然の事態を上手く受け止めきれず、疑心暗鬼になって、これからも彼のそばにいる自信もまったくなかった。
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