クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「無理はしないでね」

 願うのはそれだけ。体調を崩したら元も子もない。

「汐里に癒されたから、心配ない」

 完全な自己満足の独り言に返事があり、私は驚きが隠せなかった。顔を上げようとすれば、先に耳たぶに唇の感触がある。

「おはよう、汐里」

 寝起き特有のとびきり低い声で囁かれ、吐息を感じるほどの近さに私の背筋がぞくりと震えた。

 続けて彼の長い指が焦らすように耳元から顔の輪郭をなぞって、昨晩の熱をじわじわと呼び起こす。

「普通! 普通に言えばいいでしょ」

 この流れを絶ちたくて、可愛げもなく私は叫んだ。

「汐里があまりにも可愛いから」

 私の訴えなどものともせず、真逆のことをしれっと返される。続けて亮は私の首元に顔を沈めてきた。

 彼の柔らかい髪が肌を滑ったかと思えば、生温かい舌の感触に動揺が隠せない。

「ん、ちょっと」

 抱きしめられているので、どうしても私に()が悪い。背中に回されていた亮の手は優しく肌を撫で、いつのまにか私の胸に触れはじめ、ゆるやかに刺激される。

「待っ」

 制止の声が、悲鳴に似たものになる。素早く唇を重ねられ、頬に添えられた手は大きくて力強い。おかげで私は顔を背けられず彼からの口づけをおとなしく受け入れる。

「ふっ……や」

 舌と唇で翻弄されつつ指で耳も刺激され、どこに意識をもっていけばいいのかわからない。ゾクゾクと粟立(あわだ)つ肌は寒いのか熱いのか。
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