クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 ぱちくりと目が開き、アラームが鳴る前に目覚めるのは久しぶりだなとまずは思った。部屋の中はまだ薄暗いので再び目を閉じる。

 あとどれくらい寝られるかなと微睡(まどろ)む意識の中、不意に温もりを感じた。

 なんだろう。心地よくて手探りで求めれば、むしろ自分が引き寄せられる。

 そこで私は改めて大きく目を見開き、今度はしっかりと意識も覚醒した。寝ぼけて自宅と勘違いしたが、ここは家ではなくホテルでおまけに今日は日曜日だから仕事はない。

 冷静に状況を分析する中、亮に抱きしめられている状態が先にきて、どうも上手く頭が働かない。

 私がなにも身に纏っていないのも落ち着かなさに拍車をかける。私はちらりと上目遣いに彼を見た。

 漆黒の瞳は瞼に隠され、長い睫毛が影を作りそうだ。あどけなさが残る寝顔は昔のままでいつまでも見ていたくなる。

 昨日という大一番を迎えるまで、ずっと動きっぱなしだったんだよね。

 疲れているのも無理はない。直前でトラブルもあったみたいだし。私は思わず亮に手を伸ばした。

「お疲れさま」

 そっと彼の前髪辺りを軽く指先で触れる。下手に動くと起こしてしまうかもしれないので、もう少しこのままでいよう。

 そう決めて私は彼の胸に顔を(うず)めた。寝ぼけていながらも私を抱きしめていてくれたのが嬉しくて、笑みがこぼれる。

 息を吐き直に伝わる亮の体温と鼓動音に安心して、私はぽつりと呟く。
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