クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 私たちの関係を友達と呼ぶには違和感があるし、そうなるとやっぱりただの同じゼミに所属する先輩と後輩としか言いようがなかった。

 とはいえ、たまに合同のゼミがあっても彼と接する機会はほとんどないし、もちろん向こうも用事がないのだから私に話しかけてもこない。

 ゼミで彼と親しそうにする同年代の先輩を見て、少しだけ羨ましかったりもした。寂しさにも似た曖昧な気持ち。

 前はこんな感情まったく芽生えなかったのに。

 足早に時は過ぎ、七月と八月をまたぐ今週で試験も終わる。私は残すところあと一科目だけで、しかも資料の持ち込み可の講義なので気は楽だった。

「谷川」

 先日のゼミの報告会のまとめを山寺(やまでら)先生に提出しにいった後で、ふいに声をかけられ私は振り返る。

 笑顔で駆け寄ってきたのは山寺ゼミで同じ報告グループの北村(きたむら)信也(しんや)だ。

 高校までバスケット一筋で、大学でも続けていると話していた。背はそこまで高くないと本人は気にしていたけれど、なかなかの腕前でスポーツ推薦でこの大学に入ったんだとか。

「課題出せた?」

「うん。北村くんも?」

 北村くんは軽く頷き、明るめの茶色い髪がわずかに揺れた。本人(いわ)く大学デビューらしい。

「俺も出したとこ。にしても、あんだけゼミを頑張って、これを出さなかったら単位くれないとか本当厳しいよな」

 苦虫を噛み潰したような表情に私は苦笑する。
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