クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「谷川さんは誰かと行って水族館を楽しむタイプじゃないと思うけど?」

 それはまさしく図星だった。私は自分のペースでじっくりと水族館を楽しみたい。解説を読んで、気に入った生物は気がすむまで眺めていたい。

 館内で各自自由行動ならいいけれど、友達と行ってそうはいかないことくらいはわかっている。

「そうかもしれません。でも、せっかくの機会ですし……」

「なら俺が連れて行ってあげるよ。ちょうどヒアリングで行く段取りをしていたから」

 肯定しつつそれとなく主張すれば、予想だにしない提案が待っていた。

「それは悪いですよ。だって先輩は卒論のために行かれるんでしょ?」

「そう。その間、谷川さんは存分に海中水族館を楽しんだらいい」

「む、無理です。冴木先輩と水族館に行ったなんて誰かにバレたりでもしたら……」

 私は首と手を同時に横に振って、精一杯拒否した。大学近くの水族館では、お互いにたまたま何度か現場で居合わせただけ。

 それと約束して一緒に出かけるのとでは話が違いすぎる。

 亮が水族館で私と会ってどんなに話が弾んでも、大学での私への態度が以前のまま必要最低限なのは、変に周りに誤解されないためだと思っていた。

 勘違いするなと言われている気さえした。なのに、どうしてこういう提案をしてくるのか。
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