クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「あと申し訳ないのですが、私、先輩を好きかどうかもよくわかりません」

 ものすごく失礼を承知で本音を告げる。こんな状態なのに付き合うっていいのかな? 好きじゃなくても、亮に告白されたらふたつ返事でオッケーする女子がきっとほとんどだ。

 恐れ多い発言だったかもと少し後悔する。プライドを傷つけたかも。怒るかな?

 こわごわと相手の反応を窺えば、予想に反して亮は笑っていた。

「谷川さんって正直すぎ。ただそれって裏を返せば俺を嫌いってわけでもないんだろ?」

「……はい」

 そこに迷いはなかった。けっして彼を嫌いというわけじゃない。それははっきりと言える。私の答えを聞いて、亮は満足げな笑みを浮かべた。

「心配しなくても絶対に好きにさせてみせる。だからとりあえず今は、おとなしく首を縦に振っておけ」

 余裕たっぷりの彼に、私は押される形でおずおず首を動かす。すると亮はすかさず私の頭に手を置いた。

「よろしく、汐里」

 大きな手のひらの感触に驚いて、さらには聞いたことがない優しい声と笑顔に思わず胸が高鳴る。きっとこれは夢だ。すぐに覚める。

 周りもそう思っていたに違いない。私たちが付き合い始め、当人同士を差し置いて周囲のざわめきはすごかった。

 直接的な嫌がらせはなかったもののあれこれ言われたりもした。付き合っている本人が信じられないのだから周りはもっとだっただろうな。

 けれど、そういった喧噪(けんそう)は意外にも最初だけだった。亮がなにかフォローしてくれていたのかもしれない。彼との交際は意外にも私が大学を卒業するまで続いた。

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