クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 何度か瞬きを繰り返し、怒涛(どとう)に押し寄せた大学時代の記憶を夢現(ゆめうつつ)で整理する。

 一度目を閉じて、温かさに微睡(まどろ)みつつ深呼吸をした。昔の夢を見るのは久しぶりだ。どうしてこんな夢を見たんだろう。

 そこで我に返り、私は勢いよく身を起こす。昨日はどうやって帰った? そもそもどこまでが夢で、なにが現実?

 巡る思考をストップさせたのは、すぐそばで眠る亮の存在だった。先ほどの夢の中よりも幾分(いくぶん)(たくま)しさと精悍(せいかん)さが増した彼の瞼は閉じられ、長い睫毛(まつげ)が影を作っている。

 おまけに上半身は服を着ていない。

 たしかに彼は寝るとき、あまりなにかを身につけたがらないタイプだったけれど……。

 はたと気づけば私もドレスの下に着ていたインナー一枚だ。透けるのを防止するロングタイプのキャミソールで着心地はとてもいい。

 よかった、ドレスを着たまま寝ていたら皺になっていた……って、そうじゃなくて!

 状況が把握できず、パニックを起こしそうになる。とにかく亮が起きる前に、ここを去ろう。なんとか導き出した結論を決行しようと体の向きを変えた。

「汐、里?」

 ところが(かす)れた声で名前を呼ばれ、私は壊れた人形のごとくぎこちない動きで顔をそちらに向けた。

 さっきまで閉じられていた亮の双黒の瞳が姿を現し、寝ぼけ(まなこ)ながらもばっちりと目が合う。
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