クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 そもそも手帳を確認する手間が惜しいだけなのかも。

『来週の木曜日、仕事が終わった後は?』

 不意に尋ねられ、今度は慌てて私が自分の予定を確認する。とくになにもなかったはず。

『うん。空いてるよ』

『なら、飯でも……』

 そこで私は、亮が続ける前に先に付け足す。

『あ、今度は私にご馳走させて。今回のお礼に!』

 機先を制して声をあげれば亮は少しだけ呆れた顔になった。

『気にしなくていいって言っただろ』

『そういうわけにもいかないよ。たくさんお世話になっちゃったし』

 正直な感情で申し出た一方で、ちくりとなにかが胸に刺さる。こういうとき素直に相手の好意に甘えられるのが可愛い女の子なんだ。香織に注意されたのを思い出す。

 意地を張っているわけでも、借りを作るのが嫌とかそういう話じゃない。ただ対等でいたいだけなのに。

 自分で言い訳して“対等“”という言葉にさらに胸が痛んだ。それを誤魔化したくて私は続ける。

『行きたいお店とか、食べたいものとかある? 任せてもらえるなら……』

『なら汐里の作った飯が食いたい』

 遮られた言葉に私は、『ん?』となんとも間抜けな反応をしてしまった。ところが亮の顔は大真面目だ。
< 37 / 143 >

この作品をシェア

pagetop