クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
『面倒か?』

『そういうわけじゃないけど……そんなのでいいの?』

 確認を含め尋ねる。これはもしかして逆に気を使われていたりする?

 亮ほどではないにしろ私も社会人五年目だし、それなりのお店でご馳走できるくらいのお給料はもらっているのに……。

 葛藤を抱えた表情で亮を見つめれば、先に彼がふいっと視線を逸らした。

『もし希望を言ってもかまわないなら……あのよく作ってくれた和風のハンバーグがいい』

 思わぬ切り返しに目を丸くする。歯切れ悪いのは照れているからなのか。具体的メニューまで挙がるのは、本気で私の手料理を望んでくれているらしい。

 そんな亮がなんだか急に可愛らしく感じた。そして付き合っているとき、家でよく料理をご馳走したのを思い出す。

 私がどちらかといえば和食が好きで、ケチャップを切らしてハンバーグにきのこの和風ソースをかけたのを出したとき、亮はすごく気に入ってくれた。

 それから何度かリクエストされたっけ。 次々に鮮明に蘇る思い出に私は目を細める。

『うん。いいよ。他に希望はある?』

『あとは汐里に任す』

『了解』

 懐かしい。あの頃もこんなやりとりを彼としたな。自然と笑顔になって、ふと前を見ればいつのまにか亮も穏やかに微笑んでいた。その表情に私の胸はつい高鳴ってしまう。
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