クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
別世界に私たちを隔離したエレベーターはゆっくりと上昇する。私の心拍数もだった。
「体調は?」
不意に沈黙を裂いたのは彼の方だった。私は慌てて答える。
「平気。気が張って疲れたんだと思う。いつもの片頭痛」
「薬は持ってるのか?」
「う、うん。ひどくなる前に飲めばよかったんだけど、ちょっとタイミングを逃しちゃって」
「吐き気は?」
「そこまでひどくないよ」
私は苦笑する。懐かしい気持ちと信じられない思いが入り混じってなんとも言えない。早い会話のラリーが終了し、私は思わず彼から視線を逸らした。
彼は冴木亮。私のふたつ年上で今は……二十九歳。なにげなく会話を交わしたものの会うのは大学を卒業して以来なので、およそ五年ぶりだ。
スーツ姿だからか、何年も経ったからか、記憶の中の亮よりもずっと大人びている一方で、あの頃の面影もしっかりと残している。
短めの黒髪は今はワックスできっちりと整えられていて、切れ長の瞳は甘さはなく相変わらず冷たそうな印象だ。
細身だけれど、背も高く肩幅もそれなりにある。彼と身長のバランスが取れている気がするのは、私が今ヒールを履いているからだ。隣に並ぶと、よく見下ろされてからかわれた。
無意識に思い出が蘇り、苦しさにわざとエレベーターの階数を照らすランプに視線を送る。
息を吐いて、考えを別の方向に必死に向けようとし、そこでふと今になって、エレベーターは階下ではなく上っている事実に気づいた。
「体調は?」
不意に沈黙を裂いたのは彼の方だった。私は慌てて答える。
「平気。気が張って疲れたんだと思う。いつもの片頭痛」
「薬は持ってるのか?」
「う、うん。ひどくなる前に飲めばよかったんだけど、ちょっとタイミングを逃しちゃって」
「吐き気は?」
「そこまでひどくないよ」
私は苦笑する。懐かしい気持ちと信じられない思いが入り混じってなんとも言えない。早い会話のラリーが終了し、私は思わず彼から視線を逸らした。
彼は冴木亮。私のふたつ年上で今は……二十九歳。なにげなく会話を交わしたものの会うのは大学を卒業して以来なので、およそ五年ぶりだ。
スーツ姿だからか、何年も経ったからか、記憶の中の亮よりもずっと大人びている一方で、あの頃の面影もしっかりと残している。
短めの黒髪は今はワックスできっちりと整えられていて、切れ長の瞳は甘さはなく相変わらず冷たそうな印象だ。
細身だけれど、背も高く肩幅もそれなりにある。彼と身長のバランスが取れている気がするのは、私が今ヒールを履いているからだ。隣に並ぶと、よく見下ろされてからかわれた。
無意識に思い出が蘇り、苦しさにわざとエレベーターの階数を照らすランプに視線を送る。
息を吐いて、考えを別の方向に必死に向けようとし、そこでふと今になって、エレベーターは階下ではなく上っている事実に気づいた。