クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「他には?」

「え?」

 後悔の渦に(さいな)まれていると、意外な言葉が亮から飛んだ。彼はカップをテーブルに置き改めて私と向き合う。 

「汐里の知りたいことにはなんでも答えるし、嘘もつかない」

 真面目な様子に私は悟る。付き合うときにも言われたけれど、亮はやっぱり別れたときのことを気にしているんだ。

 勢いに押され、喉元まで出かかった言葉を私はすんでのところで飲み込む。

 私と別れてから他に誰かと付き合った? 結婚は考えなかったの?

 正直、そこが気になったもののさすがに過去の恋愛について尋ねるほど野暮じゃない。聞いても傷つくだけだし、今亮が私のそばにいるのは紛れもない事実だ。

 私は一際明るい声で彼に問いかける。

「えっと。じゃぁ、このアクアリウムってどうしたの? やっぱり仕事の関係?」

「仕事というか、世話になっている人に勧められたんだ。もちろん仕事のインスピレーションにも繋がるし、知識や経験を増やすのは悪い話じゃない」

 アクアリウムひとつでそこまで計算するのは、やっぱり亮らしい。でも打算的なだけじゃないのもわかっている。

「どの子も元気に泳いでいて、亮が大事に世話をしているのが伝わってきたよ。相手は生き物だし、色々言っても好きじゃないとできないと思う」

「そうだな」

 意外にもあっさりと肯定され、私は亮を二度見した。彼は私から視線を逸らさない。
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