クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「汐里が好きだったから」

 続けて、なぜか私の名前が出てきて、瞬時に意味が理解できない。私がアクアリウムを好きだったって話? たしかに私は水族館をはじめこういった類に目がない。

 それとも――。

「ずっと好きだった」

 答えを出せずにいると、亮が身を乗り出してこちらに体を寄せてきた。

 彼は何も言わないまま静かに私との距離を縮め、相手の漆黒の瞳に自分が映るほどの近さになり、私はようやくおずおずと目を閉じる。

 すると触れるだけの優しい口づけが始まった。

 幾度となく唇を重ねられ、引き結んでいた唇が解けていく。心なしかコーヒーの味がする。亮は私の手の中にあったカップを奪うと、そっとテーブルの上に置いた。

 その間もキスは続けられていて、私の手が空くと、口づけはさらに遠慮のないものになった。いつの間にかソファの背もたれに背中を預け、横にいたはずの亮が正面にいる。

 心臓がはちきれそうに煩くて痛い。でも嫌じゃない。亮の背中とまではいかなくても、彼の腕に手を添える。

 少しでも受け入れる気持ちが伝わればいいと思ったから。

 なのに、キスの合間に彼の長い指が私の耳をかすめ髪をかけたかと思えば、意地悪く耳たぶに触れだした。

「ふっ」

 くすぐったさに身を(すく)めそうになるも、相変わらず亮のペースで口づけは続けられる。

 面白がるように頬から耳に指を滑らされ、さすがに抵抗を試みれば、強く抱きしめられ、どうしても私に分が悪い体勢になる。
< 53 / 143 >

この作品をシェア

pagetop