クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 じっと亮を見つめる私に、彼は苦笑して続ける。

「今日、泊まるって言いだしたのも、本当はあれこれ悩んだんだろ。俺に気を使って」

「そんなこと……」

「ある。汐里は昔からぼーっとしているようで、他人への気遣いは人一倍だったから」

 私の言葉を遮り、亮ははっきりと言い切る。『ぼーっとしているようで』というのはなくてもいいんじゃない?

 いつもならそう言い返すのに、様々な感情が胸を詰まらせて声にならない。

「ほら、もう寝るぞ。週末だし、疲れもあるんじゃないか? 自分から泊まるって言いだして気も張ってただろうから」

 まさにその通りで、亮にはすべてお見通しだった。改めて共にベッドに入る体勢になり、私はすぐそばの彼に尋ねる。

「怒ってない?」

 その質問に、亮は呆れた顔になる。

「なんで怒るんだ。汐里にとって俺はそんなに思いやりのない男か?」

 亮の切り返しに私は力強く首を横に振る。ところが彼は急に自嘲的な笑みを浮かべた。

「いや間違ってないか。今も昔も付き合うときは、俺が一方的に話を進めたし……」

「それは違うよ!」

 今度は私が即座に言い放つ。

「私、今も、大学生のときだって、流されて亮と付き合ったわけじゃない。嫌ならちゃんと断ってる」

 きっかけはたしかに亮からだった。でも付き合っていくうちに、彼を知って惹かれていったのは間違いない。冷たくて意地悪なときもあるし、からかわれるのも日常茶飯事。

 けれど亮はしっかりと私を見ていて、肝心なときはいつも的確な言葉で背中を押してくれる。優しく手を差し出してくれる。
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