クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「あのね、こんな形でだけど久しぶりに会えて嬉しかったよ。元気そうでよかった。今日は本当にありがとう」

 とにかく私は思い描いていた再会に近づけるべく、亮に伝えたい言葉を並べる。目的は達成できた。ならこれ以上の長居は無用だ。

 続けて「お水もらうね」と断りを入れ、ボトルの蓋を開けると、素早く薬を口の中に放り込み水を含む。

 白い錠剤を強引に胃へと送り込んだ。そのタイミングを見計らってか、亮が口火を切る。

「そんなに遅くはならないから、待てないか?」

 先ほどとは違い、どこか不安そうに尋ねてもくる亮に私は答えに困った。それはすぐに伝わったらしい。

 彼はおもむろに携帯を取り出す。そして意味がわからずにいる私に亮は短く告げた。

「なら、用事はキャンセルする」

 私はさっと血の気が引いて、亮に近づいた。

「ま、待って! それは駄目だよ! 仕事でしょ?」

 電話をかけるのを思わず阻止しようとした私の腕が思いがけずも掴まれる。

「だったら、おとなしく待っててくれ」

 真剣味を帯びた彼の低い声と共に、力強い眼差しが私を射貫く。おかげで、私は瞬きひとつできない。

「俺に会えて少しでもよかったと思うなら、素直に甘えておけ。……ただ、本当はこれ以上俺と一緒にいるのが苦痛なら無理()いはしない」

 切なさの交じる言い方に、心の奥底で私が揺れているのを見透かされているのだと悟った。

 掴まれている腕が熱い。けれど、さっき岡元くんに触れられたときとは全然違う。亮は私から視線を逸らさない。

『久しぶりに会えて嬉しかったよ』

 嘘じゃない。本当にそう思った。でも――。
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