幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
私は帰り道、先ほど藤森先生が言っていた言葉の意味や、内容の意味を反芻していた。
最近、ストーカー業にいそしんでいないと思ったら、健一郎は健一郎でいろいろと忙しかったらしい。
そんなことも知らずに、健一郎と毎日一緒にいるだけで、職場も一緒なのに何も知らずに隣で怒ったり笑ったり、私だけ自由に過ごしていた。
私はなにもしらないままそこにいただけで、何一つ、健一郎の力にはなれていないのだ。
それだけじゃない。
健一郎は私の心配までして、負担だけを彼に増やしている気がするのだ。
―――でも。
「三波さん?」
帰ると、健一郎がじっと私の顔を見つめる。
「僕を揺さぶって楽しいですか」
「へ……?」
「真壁はさすがにここまでしないか」
「何言って……」
「結構きつくしないとこんなのつきませんよ」
健一郎が指さしたのは私の首筋だった。そういえば、さっき、噛まれた。
痛かったけど、そこまで残っていたとは思わずに、私は藤森先生のことを思い出して眉を寄せる。
「あのね、これはね」
ゆっくり説明しようとしたところで、健一郎に抱きしめられる。
その力が強くて息ができない。胸がドキドキと鳴り始めた。
「三波さん、僕だけのものでいてほしいんです。ずっと僕だけのもので……。僕は、三波さんのこと好きすぎて、このままここに閉じ込めておきたいくらいに思ってるんです。なのに、そんなもの見せられて、僕はおかしくなりそうです」
私はじっと健一郎の眼を見た。
慌てて誤魔化したり、弁解したり、そういうのじゃない。
「健一郎が気になるなら、いいよ。それでも。私、やましいことはなにもしてない。このことも、ちゃんと話すから」
私はじっと身じろぎせずにそう言う。「健一郎、私ね。私は健一郎がこれからどうしようが、健一郎のそばにいたいの」