幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
桃子は、他の誰より一緒にいて楽だった。彼女は、感情的にならない。誰よりも冷静で、頭の良い女性だった。
彼女は相手に愛情なんて求めてなかった。だから、ただ、彼女といる時だけは何も考えず気楽に快楽に溺れていられた。
そうしていると、医者の適正とかそういうものがすべてどうでもよいと思えた。ある意味、自分のこの感情の起伏のなさが適正にすら思える。
相手は『人』ではなく『病気』。『ビジネス』としての医療。のし上がって権威を得たら、人より多くのお金が手に入る。どの世界でも当たり前だし、別に悪い話じゃない。
自分にはそっちの考えの方が向いていたのだろう。
―――でも、そもそもなんで医者になろうなんて思ったんだろう。僕は変わらないままでよかったんだろうか?
なんとなく、佐伯先生の顔が見たくなって、僕はある日、佐伯医院に顔を出した。