幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
「私は……」
「俺、結構諦め悪いのな。お前が結婚したって聞いても、ずっと……」
「ま、ま、ま、ま、待って! ストップ!」

 私は思わず真壁くんの言葉を切って叫ぶ。そしてつかんだ手を離して立ち上がり、「私、帰る」と言った。

「三波、待てって!」

 真壁くんの顔はいつにもまして真剣だ。胸がドキリとする。
 あのときと、同じだった。高校の時、告白された時と……。

 私はドキドキする鼓動を抑えるように、息を吸って口を開く。

「私、健一郎のことは別に夫として認めているわけじゃないけど……これ以上この話、ここで、二人で、真壁くんの部屋でしちゃいけない気がする。また、森下先生と一緒に飲みに行こ?」

 私は私の信念を貫く。
 だって、いくら健一郎の訳の分からない提案とはいえ、私はそれを受け入れ、私と健一郎は今夫婦なのだ。
 その言葉を聞いて、真壁くんがショックを受けた様子で口を開く。

「……俺は、二人で飲みにも行きたくない存在?」
 私はそれにこたえることなく、
「ゆっくり寝て、また明日から仕事、頑張ろうね」
と笑って部屋を後にした。

 そして、道に出てタクシーを止め、それに乗り込む。
 タクシーに乗りながら高校時代のことを思い返していた。


―――私は高校時代。ずっと真壁くんのことが好きだった。ずっとずっと大好きだった。
 ずっと恋をしたいと思っていたが、私の恋はあの時最初で、あの時最後だったのかもしれない。

 あの時、真壁くんの告白を断った理由だって……。
 別に彼が嫌いだったというわけではないのだ。

 私は唇をぎゅっと噛む。その時、口の中に鉄の味が広がった。
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