幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

 桐本先生に、ここね、と言われて、資料室に入る。

「久しぶりに会ったら結婚しただなんて驚いて、まだ信じられないの。しかも相手があなたって……」
 急に、桐本先生はそんな話をしだした。

「何言って……」
「今日一日だけでいいから健一郎を私に貸してくれない?」
「貸してって言われても」
「ごめんなさい」

 桐本先生はそう言うと、私をそのまま室内に残し扉を閉めた。
「ちょ、桐本先生⁉」
 扉に向かうものの、扉は先に閉まる。鍵はない。
 そう、ここは、内側からは開けられないのだ。

「ちょっとぉおおおお! ここ、内側から開かないじゃん……!」

 なんで私がこんな目に……。これも全部健一郎のせいだ……。
(って言うか、さっき桐本先生、今日健一郎を貸してとか言ってた?)

 もしかして、二人でどこかに行くつもりだろうか……。
 そう思って顔を横に振る。それを止める権利は私にはない。だって、私は、健一郎がキスのその先をしたいと言っても、まだそんなことをできるほどの状態じゃない。

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