幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
ただ、室内は少し肌寒かった。室内の電気も煌々と明るい感じではなく、薄暗い。
「薄暗いし、寒いし……しかもスマホないし」
私は周りを見渡す。
(ここ、幽霊出ないわよね……。まぁ、私は幽霊の類は怖くないけど)
そう思っていると、外で雷の音が聞こえた。
「ひっ! なんで今、雷!」
私は思わず耳をふさぐ。
「もう散々だ、全部、健一郎のせいだ! あのバカぁああああ!」
なによ、今頃桐本先生と楽しく飲んでいるんじゃないでしょうね! キスとかその先とかしてないでしょうね!
苦しい、腹が立つ! もやもやする! 最悪だ!
なのに、思い浮かぶ顔は今も……あの顔ばかりだ。
「健一郎! 根っからのストーカーなんだから、こんな時はちゃんと助けなさいよ! バカ!」
そう叫んだ時、資料室の扉が開いた。
本当に健一郎が飛び込んでくる。その顔を見て、泣きそうになった。
「三波さん! なんでこんなとこに」
「健一郎こそ、何でここ」
「匂いをたどりました」
そう笑った健一郎の胸元に、私は思わず飛び込んでいた。健一郎が慌てたように固まる。
「み、三波さんっ⁉」
「嘘でもほんとでももういい……。来てくれてよかった……」
「三波さん……」
健一郎が背中に手を回そうとして、ぴたりと手を止める。そんなことに構わず、私は自分だけ健一郎に抱き着くと、ぎゅう、とずっと健一郎を抱きしめていた。
そのとき、バタンと音がして、目を向けると扉が閉まっていた。
「閉まってしまいました」
「はい?」
「鍵、つけっぱなしなので……外から開けてもらえるまで出られません」
健一郎がつぶやく。私は思わず、
「……なんでそんなバカなのよぉおおお!」と叫んでいた。
「大丈夫です!」
健一郎は自信満々に言う。
「スマホ持ってるとか⁉」
「僕は三波さんと一緒なら何日でも何か月でもここで大丈夫です! むしろ嬉しいです!」
「そういうことじゃない!」
思わずツッコんで健一郎を見ると、健一郎は心底嬉しそうに私を見ていた。
「……ま、まさか確信犯じゃないでしょうね……!」
「まさか」
「……」
(本当だろうか……)
疑いの眼差しを向けてみても、健一郎はニコニコとこちらを見ていた。