クールな婚約者との恋愛攻防戦
「……目くらい閉じろ」

唇が離れてまず言われたのが、その言葉だった。

そんなこと言われても、突然過ぎたからそんな余裕はなかった。



「……私、ファーストキスだったよ。もうちょっとロマンティックな感じが良かったな。やり直そう」

「ファーストキスは二度ない」

「分かってるなら、もう少し大事に扱ってよ」

「……悪かったよ」

「ううんーー嬉しい!」


ガバッと正面から樹君に抱きつくと彼は、「おい、離れろ」と言って、私の身体を引き剥がす。
そこは抱き締め返してほしかったー……と軽くショックを受けたのも一瞬。

右手で口元を覆って、明らかに照れている様子を隠し切れていない彼のことを、とても愛おしく感じた。



「樹君、大好き!」

生まれて初めて異性にこの気持ちを伝えたけれど、不思議と恥ずかしさはなく、自然と口から出た言葉だった。

樹君からは、どうせ〝別に〟だの〝ああそう〟とか素っ気ない言葉が返ってくる……かと思いきや。



「……俺も好きだ。愛梨のことは、俺が一生守っていく」

予想もしていなかったストレートな愛の言葉を受けて、私にしては珍しく、照れて言葉を失ってしまった……。
< 75 / 79 >

この作品をシェア

pagetop