俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 秘書課の人間といえど、社長室に入る機会などなかなかない。私でさえ社長とは挨拶程度の会話したことがないもの。

「それで気になってそっと入って秘書室から盗み聞きしたんだけど……」

 ごくりと生唾を飲み込む。だけど細川さんはへらっと表情を崩した。

「これが残念ながら、会話内容は聞き取れなかったのよ」

 それを聞き、がっくり項垂れてしまう。でもそうだよね、私だって副社長室から聞こえてくる彼の話声は聞き取れても、内容まではわからないもの。

「でも、親密そうに話していたわよ? あれはなにか社長と関係を持っていると見たわ」

「関係?」

 首を傾げると、細川さんの推理ショーが始まった。

「社長室に入っていく時も、周囲を気にしていたもの。もしかしたら社長に危ない取引でも、持ちかけたんじゃないかしら。それを引き合いに出して自分の出世を狙っているのかも。……いや、こんなこと考えたくないけど、社長とふたりで、なにか悪だくみを企てている可能性もあるわね」

「悪だくみって……。時代劇じゃあるまいし。社長に限ってあり得ないよ」

 空笑いする私とは違い、細川さんは真剣そのもの。
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