ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
……あれ?

てことは……もしかして……。


「鳥が騒いだり、魚が上がってるの?」

イザヤの言ったまんま、聞き返してみた。



少しの沈黙の後、イザヤはため息をついて、それからようやく重い口を開いた。

「……頻繁ではない。だが、ここ数年、年に数えるほど、そんな報告を受けている。」



あらま。

そうなんだ。


……それは……もしかして、もしかするのかな。



改めて湖を見下ろした。

深い青の湖面は、さざなみで靜かに揺れていた。


穏やかな、湖。

見えないところで、何が起きているのだろうか。


私がこの世界にやってきたことと、何らかの関係があるのだろうか。



「母なる湖……。」

思わず、そう口走っていた。


このレアダンスモレン湖じゃなくて、琵琶湖を表す言葉なんだけどね。



「そうだな。この湖は、我が家のみならず、このオーゼラの、いや、この大地を潤す、命の源だ。母と言う言葉がふさわしい。」

しみじみと、イザヤが同調した。



……そっか。

本当に、琵琶湖と同じなんだ。


飲み水も、カピトーリまで引いてるんだっけ?


そういう意味でも、欲しがるよね……。





「雨が降りそうだな。行くぞ。」

イザヤが、私の肩を抱き、伊邪耶の鳥かごをひょいとつまみ上げた。



「うん。……今夜から雨って聞いた。」


何気なくそう答えたら、いぶかしげにイザヤが尋ねた。


「誰が言ったのだ?」


その表情が妙に険しくて……私は、少し怯んだ。

「……リタ。」

まるで、告げ口でもしてるような、そんな罪悪感に近い気持ちになった。



イザヤの表情が、少しほぐれた。

「そうか。リタか。」


「……ティガや、シーシアだったら?……何か、問題あった?」



この世界の気象は、難しい。

法則性が見出せないので、天気予報は、自然現象の変化を読むことしかできない。

白い雲が黒くなってきてからしか、雨が降るとは予測できない。


しかも、今、イザヤの館には気候を狂わせる神の花嫁がいる。

シーシアの起こす変化も考慮した天気の予測なんて、まったくお手上げ状態。



……でも、もしかしたら、それは、……私たちだけかもしれない。

シーシア本人や、すぐ側にいるドラコやリタには、何かわかるものもあるとか?

だとしたら、それはトップシークレットのはずだ。

< 165 / 279 >

この作品をシェア

pagetop