ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
そもそも、気象条件って軍事利用できちゃうしさ。

ティガもドラコも、無頓着なわけがないのよね。



「たとえば、イザヤの留守中、意図的に大雨をシーシアが降らせることができたとしたら、ちょっと怖いよね。」


冗談っぽくそう振ってみたら、イザヤは大真面目にうなずいた。

「あの女が、私を館に戻らせたくない一心で雨乞するやもしれぬ。」



……さすがに、呆れた。

やっぱり、お花畑だわ、イザヤ。


「雨降らすより、荷物まとめてさっさとカピトーリに帰ったほうが早いやん。……そうじゃなくて、雨に乗じて、また戦が始まるかもよ。」



イザヤは鼻で笑った。

「どこで戦が起こると言うのだ。カピトーリは、周辺諸国をほぼ平らげた。残るは北東のオピリアだが……冬場は雪に閉ざされているのに、今、動くわけがない。それにオピリアは未開地過ぎて、わざわざ攻め入る必要もない。」



私は、遠く北東と思われる方向を眺めた。

さっき私が行きたいとおねだりした、湖の向こう側。

森林の向こうに壁のようなムードラ山脈がそびえ立っている。

そのさらに向こう側が、オピリアだ。

もちろん見えないが、何となく暗くどんよりした雪雲に覆われているようだ。



「確かにオピリアは、わざわざ攻略する必要もないと思われてそうねえ。……後回しでいいかな。」


その前に、このオーゼラの国を完全に平らげてしまうんだろうとは思う。

思うけど、口に出して言うことは憚られた。



イザヤも何も言わず、私の手を引いた。



***

神殿に入ると、イザヤは鳥の伊邪耶を籠から放った。


伊邪耶はうれしそうに、大きく飛び回った。


「あやつ、まるで祝福してくれているようだな。」

イザヤは、目を細めて鳥の伊邪耶を眺めていた。


「ふふ。いざやが、立会人ね。」

そう言って、イザヤの腕に手を絡めた。


見つめ合い、頷き合うと、私達は神々の前へと歩を進めた。

コツコツ、カツカツ……と、2つの足音が響く。



「……おかしなものだ。昨日より、緊張しているらしい。」

イザヤが苦笑して、震える指先を私に見せた。


おままごとじゃなくて、けっこう本気らしい。



「うれしい。……私も、昨日より幸せやわ。」


そう言ったら、イザヤが私の頬にキスをくれた。

ますます頬がゆるんでしまった。

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