ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
「いつも、そんな顔をしていてほしい。私のそばで。私と共に。この先、何が起ころうと、どうあろうと、私は私の真心をそなたに捧げると誓う。まいら。愛している。」


神々と先祖の前で、イザヤは嘘はつけなかったのだろう。

……2人だけの結婚式のはずなのに、結婚の言葉は敢えて避けられた。


イザヤの心からの誓いの言葉は、うれしくもあり……忘れたかった現実を嫌でも思い出すものだった。



……あくまで、正式な婚姻ではないんだなあ。

私は、正妻じゃない。


あ、やばい。

涙がこみ上げてきた。


ごまかさなきゃ。

イザヤの言葉に感動して泣いたふり、しなきゃ。



私は、無理やり口元を緩めてから、イザヤを見上げた。


きらきらしてる……。

イザヤの瞳にも涙が浮かんでいる。


……本気で、愛してくれてることは、わかってる。



それで充分じゃないか。


私は、必死で自分にそう言い聞かせて……ようやく言葉を絞り出した。

「ずっと側にいる。離れない。死ぬときも一緒がいい。……そしたら、来世も一緒にいられるわ。……二世を誓おう?」



自分がどこから来たのか、これからどこへ行くのか……わからないけれど、この世界に来たのは、イザヤと出会うためだったと、思ってる。

だから、愛人でもいい。

側にいる。



……でも、来世は、愛人じゃなくて……妻になりたいな……。



そう思ったら、新たに大粒の涙がポタポタこぼれ落ちた。




どこまで通じたのかはわからない。

イザヤは、ぎゅっと私を抱きしめて、背中をさすってくれた。


私は、安心して、泣きじゃくった。



幸せなはずなのに……苦しくて……淋しくて……。



欲張りだわ。

イザヤは私と一緒にいてくれるのに。


私を愛してくれてるのに。


……2人だけの結婚式のはずなのに……。

2人だけの結婚式のはずなのに……。

……結婚式のはずなのに……。


……。

……。


……結婚式じゃないのね……。




何度打ち消しても、悲しみがわき上がってくる。


胸がつぶれてしまいそう。


苦しい。

苦しいよ、イザヤ。




いつまでも泣いている私を宥めようとしたのかな。


イザヤが小さく歌い始めた。


ハミングのような、優しい音が、私を包み込んでゆく。



ふわふわと心が浮上し始めた。

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