ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
「まいら?眠いのか?……まいら……?」


イザヤの声がどんどん遠のいていく。



そのまま私は心地よい眠りに陥った。



****


翌日、コーヒーのかぐわしい薫りで、私はぱちりと目覚めた。


明るい光の注ぐなか、イザヤがコーヒーカップに口をつけながら、鳥の伊邪耶と戯れていた。


長い金色の髪がキラキラと輝いて……王子様みたい……。




「マイラ、オハヨウ、マイラチャン、オキテ、マイラ……」

不意に鳥の伊邪耶が、お父さんとお母さんの声を真似て私を呼んだ。


胸が、きゅーっと痛んだ。




「……何て顔をしてるんだ。まいら?どうした?……やはり、痛いのか?」

イザヤが心配そうに近づいてきた。



私は、起き上がろうとして……腕も、背中も、腰も……やけに痛くて、力が入らず……そのまま、ふにゃふにゃと、またベッドに倒れこんでしまった。


「……痛い……身体中、何か、筋肉痛みたい。……力、入んない……。」


そう訴えると、イザヤは苦笑した。


「そうか。……すまなかったな。無理をさせたようだ。……出血は、止まったか?」


そう言って、イザヤは、私の夜着の裾をめくり上げようとした。



「や!」

恥ずかしくて、足をばたつかせて抵抗しようとしたが、緩慢にしか動けなかった。



「今さら照れずともよいというに。……やはり血が止まっておらぬな。……どうしたものか。」

イザヤは深刻そうにつぶやいた。


「……だって、……乾く間ぁ、ないもん。ずっと、濡れてるし、ずっとイザヤが……入ってるから……」

言ってて、恥ずかしくなってしまった。



私の身体、たった1日前と、ぜんぜん違うみたい。

中から……それも、深い深い奥のほうから、すっかり作り変えられてしまった。

……イザヤに……。


参ったな。

自分がこんなふうに変わるなんて……。


イザヤの一挙一動を見つめてしまってる。


目が合うと、心がふわふわと踊り出す。


好きって気持ちが、溢れてくる。


うれしい、楽しい、幸せだ……。




勝手に緩む頬を自制することもできず、心地よい余韻に浸った。



蜜月って、こういうことかしら。

日常生活も、家事も、仕事も放棄して、隔離された2人だけの空間で愛し合う日々。


人生の中の極々わずかな期間だけど、生涯忘れ得ぬ大切な時間になるだろう。

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