ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
そして、そーっと丁寧に、布をほどいてゆく。

中から出てきたのは……



「三味線や。」

びっくりした。


三味線まであるんだ。

てか、イザヤ、三味線まで弾けるの?



私だけでなく、イザヤもまた、目を見張った。

「ほう。知っているのか。かなり辺境の未開の小さな島国の民族楽器と聞いたぞ。『サンシン』と言う名だそうだ。」


かなり辺境の未開の小さな島国って……まあ、確かに、欧米や中国からみりゃ、昔の日本はそう表現されちゃうよなあ。


……それとも、沖縄のことなのかしら。


私は苦笑して言った。

「半分正解、半分間違ってると思うよ、その情報。『サンシン』は確かに蛇皮を使ってるらしいけど、犬の皮を使っているのは『シャミセン』って言うの。猫の皮の場合もあるんやて。」


「……詳しいな。弾けるのか?」

イザヤの目がキラキラ輝き出した。


私は慌てて手を振った。

「弾けへん弾けへん!……でも、私の国の楽器やわ。」

「そうなのか。では、かなり辺境の未開の小さな島国というのは……ニッポンのことだったのか。」


イザヤの言葉に私は苦笑した。


「失礼ねえ。……でも、その『サンシン』のある沖縄って島のことかもね。なんか、混乱してそうやし。……イザヤ、三味線弾けるの?すごいね。これ、楽譜も五線譜とは違うでしょ?」


すると、イザヤは驚いたようだ。

「……楽譜……あるのか……。」

「……独特なのが、ね。数字と、トンとかツンとかよくわかんない言葉が書いてあるだけのとか。……イザヤは、口伝(くでん)で教わったの?」



お父さんのお友達が日本舞踊のお家元なので、何となくは見知っている。


三味線って一言で言っても、いろんな種類がある。

津軽三味線とか、竹本義太夫の低いベンベン弾くのとか……長唄とか清元とか……。


ただ、私は、言葉は知ってても、どれがどの種類かとか見ただけでわかるほど詳しくない。


でも、この三味線は、だいぶ古いタイプのような気がする。


艶々とした漆でコーティングされてはいるものの木目のそのまま残った棹。

糸巻きには、お花っぽい細工も見えた。


……何となく……お座敷に使われていたものかなあ?


あ、いかん。

つい想像しちゃった。



あだっぽい芸者さんに、手取り足取り三味線を教わったのかなあ……なんて。

< 173 / 279 >

この作品をシェア

pagetop