ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
イザヤは三味線の糸を弾きながら、調音を始めた。

ぴんぴんと、懐かしい心地よい音が跳ねる。


そういえば、「別のかわいがり方」って……もしかして、コレ?

お尻で云々じゃなくて、演奏か。


なるほど。


……って、それって、今までも、しょっちゅうしてきたやん。

何も今、こうして2人きりの島でしなくてもいいのに。



でもまあ……イザヤだもんね。

音楽をどれだけ愛しているかは、もう、嫌というほどわかってるからなあ。


正直なところ、私は、そこまで音楽が好きなわけではないんだけど……まあ、いいか……。


こんなにうれしそうな顔で三味線の調子を揃えるイザヤを見てたら、私の頬も勝手に緩んだ。



「……よし。まあ、いいだろう。……唄の詞章が怪しいのだが……」

イザヤにしては、よほど自信がないらしい。


私は笑顔を作った。

「気にせんでいいよ。たぶん私もわからんから。昔の言葉やろし。雰囲気を楽しませてもらうし。」


それはそれで、気に入らないらしい。

「張り合いのないことを言うな。ちゃんと意味を理解して、聞いてほしい。……そなたへの気持ちを込めて唄うのだ。」


「……う……わかった……。」

気恥ずかしいことを、さらっと言われて、私はそれ以上なにも言えなくなった。



鳥の伊邪耶に話し掛けるように顔をくっつけて、イザヤの唄を待った。




イザヤは小さく咳払いをしてから、

♪よっ♪

と、小さく、気を発してから、三味線をつまはじき、唄い出した。



♪こおのお~お、さぁきい~~に~~~♪



……めっちゃ引っ張って歌うんや……。


ああ、これ、たぶんお座敷とかで歌われる小唄だわ。

……小唄か、都々逸か……そのへんの区別は、よくわかんないんだけどさ。



とりあえず、今のは、「この先に」かな?



イザヤは、三味線で間奏を入れて、続きをいい声で朗々と唄を諳んじた。



♪どおん~~なあ~さく~~~、らあ~~が~♪



また間奏が合いの手のように入った。



♪さこお~と~ままよん♪



はい?

……へ?……「どんな咲く」?

それに、「ママヨン」って、なに?




間奏の間中、私の頭の中で疑問符が飛び交った。



♪わたあしゃあ~~このおきいでえんんんん、くろおおおうすうる♪



あ、今度はわかった。

「苦労する」んだ。

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