ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
でも、「きでええん」ってなんだろう。


……「貴殿」?

いや……「この沖で」か?


うー、わからん。



でも、最後の一節は、全部わかった。



♪ちいるうもお、ちらあぬうもお、ぬしいのをむ~ね~~~♪



聞き取れた!

「散るも散らぬも」だ。


そうか。

桜だ。

桜の木だ。


わかった!



ほっとして、後奏を弾き終えたイザヤに拍手をした。


イザヤは、照れくさそうに三味線をそっとテーブルに置いてから、私に尋ねた。

「……どうであった?わかったか?……どこか……おかしくなかったか?」



私は、頭の中で、今聞いた詞章を繰り返し繰り返し整理してから答えた。


「この先、どんな桜が咲こうと、ままよ?わたしゃ、この木で苦労する、散るも散らぬも、ぬしの胸。」


やっぱり、「ままよ」だけ、自信がない。

けど文脈から考えたら……「(まま)よ」なのかな。


……どうにでもなれって感じ?



つまり……どんなことが起きても一緒にいるって言ってくれたのかな。

でも、苦労するって……まるで、私がイザヤを振り回すみたいやんか。

逆ちゃう?



「んーと、よくわかったけど、それって、イザヤじゃなくて、むしろ、私の気持ちを代弁してくれてるみたい。」


そう答えたら、イザヤは目を見張った。


「ほう!本当にわかるのか!……そうか。よかった。……ところで、『さくら』とは、どんな花だ?木に花が咲くのだろう?色は?……何となく聞き覚えのある気がするのだが……そなた、以前、口にしていなかったか?」


……なるほど。

本当に、あまりよく意味がわからないまま口伝で覚えたのね。


私は、苦笑して首を傾げた。

「……たぶん、ヴィシュナの木?あれと同じ品種やと思う。……たしか、初めてイザヤがオースタ島に私を連れて来てくれた時、私が桜だって言ったら、イザヤがヴィシュナだって教えてくれたわ。……覚えてない?」


「ヴィシュナだと!?……まさか……ええ?……あの、ヴィシュナなのか?……いや、確かに、ヴィシュナは花で枝木を覆ってしまうぐらい見事に咲くが……あっという間に散ってしまうではないか。はかなすぎる!そんなものに、男女間をなぞらえるのは、むしろ不吉ではないか!」


イザヤは怒ってそう言い散らした。


まあ、イザヤの言うこともわかる気がする。

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