ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
「用件を聞いてくる。」


それだけ言って、スタスタと部屋を出て行ってしまった。



……せっかく来てくれた執事さんたちに、きつく当たらなければいいけど……。


多少不安になったので、私は慌ててイザヤの後を追った。




廊下の角を曲がった先で、主従が立ち話をしていた。


深刻そうな顔……。

何だか、不安になってきた。


「……イザヤ?」

恐る恐る声をかけてみた。


イザヤは、私に困ったような苦笑を見せた。


……とりあえず、怒ってはいないようだけど……

どうしたの?

明らかに、さっきまでと様子が違う。


聞くのが怖い。


けど、やっぱり気になるので、私はイザヤの腕にしがみつくようにくっついてから、改めて尋ねた。

「館で、何かあったの?……お仕事?……それとも……シーシアが何か?」



イザヤは、かぶりを大きく振った。


そして、皮肉っぽく笑って言った。

「……お仕事は、なくなった。」


「?」


よくわからなかった。


えーと……。


「予定より、長く休んでいいって言ってもらえたの?」



そう尋ねたら、執事さんたちが……うつむいて、泣き出した。



え?

なに?


説明を求めてイザヤを見た。


イザヤは泣いてはいなかったけれど……明らかにいつものイザヤではなかった。


「……そうだな。予定より、だいぶ早かったが……私は、近衛騎士団長の職を失った。……爵位もな。」



それって……。

「国が、なくなったの?……カピトーリに、併合されたの?」



自分の鼓動が、やけにうるさい。

口の中が、カラカラする。


覚悟していたつもりだったけれど……イザヤの言うとおり、早過ぎる。

まだ、何の準備も整っていない。



そうだ。

帰らなきゃ。


館に、帰って、……シーシアを人質に……もとい、シーシアを抱き込んで、カピトーリ側と交渉しなきゃ。



めまぐるしく、頭の中に温めていた方策が駆け巡る。


考えなきゃ。

どうすれば、生き残れるか。

イザヤの財産と命を守れるか。


とにかく、一刻も早く帰らなきゃ。




焦る私と対照的に、イザヤは立ち尽くして天を仰いだ。

美しい蒼い瞳にみるみる涙がたまり、白い頬を伝い落ちた。


「……王族も……大臣たちも……みな、殺されたそうだ。……併合ではない。攻め込まれ蹂躙されたのだ。……我が国は、……オーゼラは、滅亡したそうだ。」
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