ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
さすがに、言葉を失った。

まったく知らないひとではない。

結婚式で、披露宴で、臨席されていたかたがただ。

為政者なのに、みなさん、穏やかで……代理でしかない私にも祝福をくださった……。



「……近衛騎士団は……」

聞くまでもなかったかもしれない。


王のみならず、大臣たちも殺されたというのなら……近衛騎士団は、殲滅されたか……あるいは、離散したか……。




イザヤは、首をゆっくりと横に振った。

そして、目を閉じて、くやしそうに吐き捨てた。

「カピトーリ軍は強い。……とてもかなう相手ではない。せめて、私がいたなら、一太刀でもくれてやれたろうが……所詮、多勢に無勢。いずれにしても全滅は免れぬ。」



ぶるっと、震えた。

私は、思わず両手で自分の両腕をぎゅっと抱きしめた。



……つまり……イザヤは、こうしてオースタ島にいたから……生き長らえたのね。

よかった……。


もちろん、命を落としたかたがたのことを思えば、イザヤの無事を口に出して喜ぶわけにはいかない。


でも、……よかった……。


……。


いや。

違う。


たぶん……違う……。


……。


……そうか。


おそらく、偶然じゃない。

イザヤの留守を狙っての討伐だったんだわ。


……ということは……ティガも、ドラコも……参画してるのだろうか……。




「あの……シーシアは?怖がってない?……リタだけじゃなく、ドラコやティガも、シーシアについてくれてるかしら?」

ともすれば震える声を気力で奮い立たせて、執事さんにそう尋ねた。


執事さんは、イザヤの顔色を窺いながら、答えてくれた。

「それが、王城の惨劇をお館に知らせてくださったのは、ドラコさまの部下のかたでして……北の方さまの御身をお守りするためと仰って、リタさまもご一緒に、カピトーリへ発たれました。」



……やられた……。

人質にさせてもらうつもりだったのに……シーシアの身柄を確保されてしまったか……。



心の中で舌打ちした。



「では、ティガはまだ館にいるのか。」

イザヤの顔が険しい。


平和ボケしてたイザヤも、ようやくこの状況をつかみはじめたようだ。



執事さんは、こくこくと何度もうなずき、それから恐る恐る言った。

「……お館の略奪も、カピトーリ軍による接収も、ティガさまが止めてくださってます。……お館さまにお知らせすることをお勧めくださったのも、ティガさまです。」

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