ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
……切迫した火急の事件というわけでもなさそうだけど、わざわざ早馬を飛ばしてきたということは……先触れ?


もしかして、シーシアが来るのかしら。

リタも一緒ならいいなあ……。



ティガと2人で過ごす日々が穏やかすぎて……私は来客に期待に心躍らせた。


そして、気づいた……。

来客がイザヤかもしれないとは、微塵も思わなかったことに。




……慣れてしまうって、悲しいなあ。


愛も夢も希望もないね。



***


昼食に下りると、ティガがご機嫌さんで迎えてくれた。



「さっき早馬がきてたけど、いい知らせやったみたいやね。……なあに?」


そう尋ねると、ティガは笑顔を見せた。


「リタがこちらにしばらく滞在したいそうです。」

「へ?リタだけ?シーシアは?」

「シーシアさまにはお役がございますから……。……でも、まいらの言うとおりですね。リタ独りとは。いささか心配ですね。こちらからも迎えを遣わしましょうか。」


過保護かよ……。


「ほんまに独りで徒歩で来るとかちゃうやろ?馬車か駕籠やろ?」


当然、御者か駕輿丁が一緒のはずだ。


でもティガは大真面目に言った。

「当たり前です。護衛も付いているはずです。しかしシーシアさまと比較すれば護衛の質も数も劣るのですから。……何かあってからでは遅いのですよ。」


……まあ、確かに……シーシアの移動は必ずドラコが精鋭引き連れて守ってるもんなあ。


「じゃあティガがお迎えに行ったげたら?……そや、私も一緒に行こうかなー。」


冗談ではなく本気でそう言ったんだけど、相手にされなかった。


一笑に付してから、ティガは言った。


「休み休みゆっくり来るので、到着が遅くなるかもしれないそうです。暗くなると、ますます、心配ですね。やはり迎えを遣りましょう。」

「ふーん?観光しながら来るんかな?いいなぁ。」



私のぼやきを黙殺して、ティガは早速、迎えの兵士を手配した。




……なんだかんだ言って、ティガは私がこの館から出掛けることをすごーく嫌がっている。

逃げ出すことを心配しているのか、あるいは、今のように何らかの危険を恐れているのか……。


どっちにしても、私は窮屈だ。


一人でオースタ島まで行くのはしんどいとしても、せめて、湖の上でお昼寝でもしたいものだが……絶対ダメらしい。

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