ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
浜の温泉すら侍女と護衛がついてくる。



ああああ。

イザヤと2人で……もとい、イザヤと伊邪耶と2人と1羽でオースタ島で過ごした一日って、ほんっと貴重な時間だったんだなあ……。


思い出すと、泣けてくる。


……イザヤぁ……。


***


センチメンタルな午後を過ごしたその夜。

すっかり日が暮れてから、リタが到着した。


玄関に迎えに出て……ギョッとした。


別れてからまだ100日もたってない。

なのに、リタは別人のように痩せ細っていた。


目が落ちくぼみ、あの溌剌とした健康的な美貌が姿を消し……色も何だか青白い。


……なるほど……こうして見ると、シーシアにめっちゃ似てるわ……。

さすが異母姉妹。




ティガも驚いたらしく、リタの両手を握りしめた。


「リタ?いったい……何かあったのですか?痛々しいほど痩せて……。」



そこまで言って、ティガは固まってしまった。


ティガの視線を追って……私も言葉を失った。



顔も肩も骨が目立つほどに痩せてしまっているのに、お腹だけが何か……すこぉし出っ張ってるというか……目立っているのよね。

……便秘レベルではない。

だからと言って、栄養状態の悪い飢餓状態の子……なわけないよな。



これって、やっぱり……妊娠してるんだよね?


ど、ひゃーっ!!!



「……ごめん。ずっと貧血がひどくて……立ってるの、しんどいから。入れて。……座らせて。」


言っるそばから、リタはひたいを抑えてふらついた。


「リタ!」

慌ててティガがリタを支えた。


「失礼します!」

背後から飛び出してきた執事さんがリタを抱き上げて運んでくださった。




「……ごめんなさい。」


目が回っているのだろう……リタはつらそうに目をつぶっていた。


眉間の皺と、滲んだ汗が、苦しさを伝えていた。



***


ベッドに運ばれたリタは、そのまま眠りについた。


気心の知れた侍女を残して、私たちはリタの部屋を出た。



ずっと黙っていたティガが、ようやく口を開いた。

「……あんなに痩せて……お腹の子に悪い影響はないのでしょうか……。」

「えーと……たぶんまだ妊娠中期に入ったところぐらいだろうから……つわりで食べられなかったぐらいの時期って考えたら、大丈夫じゃないかな?これから気をつけてあげよ。」

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