ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
厄介だなあ。


「んー。でも、シーシアの家に嫁ぐなら反対されるやろけど、ドラコに嫁ぐんでしょ?姑ちゃうやん。……ドラコやティガのご両親も、リタの存在、認めてへんの?」



ティガは、力なくほほえんだ。


「……そうですね。伯母は姑ではありませんが、一族で一番の権力者なので……誰もが彼女の意志を尊重しているのです。」

「えー。めんどくさー。……でも、ほな、ドラコは、独身を貫いてるってことは、既におばさんの意志に背いてるんちゃう?言いなりになってたら、とっくに既婚者の年齢やん?逆らってるやん。……ええやん。逆らいついでに、おばさんの気に入らんリタを嫁にしちゃえ。むしろ一族の厄介者を引き受けてやったとゆーてやったら?」


以前からリタの扱いに疑問と反感を抱いていた。

妾腹だろうと、婚外子だろうと、生きる権利も、幸せになる権利もあるのに。



「……非常に乱暴な言いようでしたが、私も同感です。リタにこれ以上つらい想いをさせたくありません。……無事に子供が産まれたあかつきには、ドラコのもとに遣りましょう。」


ティガはそう言ってにっこり笑った。


邪気も腹芸もない、とても素直な笑顔……あ、これ、やばいやつだ……。



一瞬たじろいだけど、ティガの瞳のきらきらに、私は逃げ場を失った。


「まいらのそんなところが好きですよ。私も見習わなければと思います。」



……告白……じゃないよね?


意識しないようにスルーして、空気の読めない返答を敢えてした。


「非常に乱暴なところ?」


じりじりと間合いを取る。



ティガは、ふふ……と笑った。


「この世界の常識にとらわれず、当たり前に博愛なところですね。……まいらは、誰しもが、等しく幸せになる権利を持っていると思っていますね?……それは、この世界にはない考えかたなのですよ。」



……自分が博愛主義だとは思ったことがないので、驚いた。


まあ、身分だの階級だのって価値観は知らないから……この世界の人たちから見れば、比較的そう見えるのかなぁ。



「シーシアさまとイザヤどのの婚姻を邪魔しにゆくなどと、あなたに言われなければ想像もいたしませんでした。……あれは、我ながら、非常に乱暴でしたが、お止めして本当によかったと思っています。」



……あー……なるほど。

それか。


「じゃあ、私、非常に乱暴でもいいのね。」

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