ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
何となく、私達は、以前より親密になった。


「まいら、温泉行こう。」

「産婆さんの往診、まいらもそばにいて。」

「まいら。前に作ってくれたサンドイッチ作って!」



食欲も戻ったらしく、あれこれ食べたがって、私に言ってくるのがうれしい。




「湖でお昼ご飯、食べたい。」

天気のいい朝、突然リタがそんなことを言い出した。



一瞬ティガの動きが止まったけれど、すぐに笑顔でうなずいた。

「今日は、気持ちよさそうですね。まいらと2人で乗船してみてはいかがですか?」


「え!うれしい!……オースタ島までは行っちゃダメ?よね?」


ダメ元でそう尋ねてみた。


「……さすがに遠すぎでしょう。浜から見える位置までにしてくださいね。護衛の者を待機させますから、何かあったらすぐ合図できるように……」

「はいっ!……リタ、ランチ、何食べたい?サンドイッチ?ハンバーガー?おにぎり?」


もはや、リタのご飯係を自認している私は、勢いよくそう尋ねた。


リタは少し考えて

「おにぎり。……ほうじ茶と。」

と、日本人のようなリクエストを寄越した。



「オッケー!お米炊いてくる!」

朝食もそこそこに、私はお台所へと突進した。



お米を炊きつつ、具材を準備しているとティガがやって来た。

「……大丈夫だとは思いますが……リタが湖に身投げなどしないよう、気をつけて見てやってください。」


想像もしていなかった頼み事に驚いた。



「え?もう大丈夫でしょ?……え?まだ、そんな感じ、ある?」


ティガは苦笑した。

「可能性がゼロではない限り、心配は尽きないものなのですよ。元々不安定というか……感情的になる子なので……よろしくお願いします。」


「はぁい。……やっぱり、ティガ、過保護ね。……てか、ティガも来たら?」


誘ってみたけど、ティガは残念そうに言った。


「ありがとうございます。ご一緒したいですが……たぶん午後、ドラコが来るので、館におります。」

「え……。ドラコ、来るの?……リタのこと……もう、知ってはるの?言うたん?」

「いえ。伝えてません。僭越でしょう?……リタ本人か、あるいは、シーシアさまから聞くべきかと思ってます。」


よくわからないな、それ。

「何でシーシア?……ドラコって、シーシアが好きなんでしょ?ショック倍増しいひん?」
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