ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
「いざや。それじゃない。」


苦笑してイザヤがそう言うと、伊邪耶は今度はお母さんの優しい声で言った。


「カワイイ。イザヤ。カワイイ。カワイイ。マイラ。カワイイ。」


「いざや~~~~」


オールを上げて、かわいい愛鳥を手にのっけて頬をすりすり。


気持ちよさそうに目を細めて丸くなってる伊邪耶が愛しくて愛しくて、心が温かくなった。



***


「ねえ。カピトーリに抗戦した国は、どんな処遇をされるの?」

昨日、聞けなかったことを聞いてみた。



イザヤはニコリともせずに言った

「為政者も軍首脳部も見せしめに首をさらされるな。身体は捌いて、軍の糧食になる。家族も陵辱の果てに、喰われる。国民には害は成さないが、上流階級者は骨までしゃぶられる。文字通りな。……だから、亡命と恭順が増える。」



……こ、言葉が出ない。


首をさらす、までは理解できる。

でも、本当に食べちゃうの?



「ヒトのお肉って……美味しいの?」

恐る恐る聞いた。


イザヤは淡々と答えてくれた。

「個体によるな。年寄りと男はかためだ。女子供はやはり柔らかい。胎児はよく好まれているが、私はまだ喰ったことはない。……我が国では、喰うより1人でも多くの国民が欲しかったからな。胎盤は、滋養強壮や美容液として人気だ。」



……胎児以外は、イザヤも食べた経験あるんだ。

こ、こわい。


そうか。

ヒトって、ヒトを食べちゃえるんだ。



何となく、ズーンと、落ち込んだ。


ヒトを食べることにも、スタンガンを常備して他国で生活しているリタとティガも、私には理解できなかった。





「イザヤは、淋しくないの?」


突然そんなことを聞いた私に、イザヤは珍しく優しくほほえんだ。


「強がっていても、そなたにもかわいい一面もあるんだな。やたら元気だから、いたわることを忘れそうになる。悪かったな。……そなたの言うとおり、確かに私は既に両親を無くしたが、館には親の代から仕えてくれる者達がたくさんいる。二度と逢うこともないかもしれないが他国には姉や親戚がいる。隣国の、しかも神宮にいて、もう何年も顔も見ていないが婚約者もいる。」



……全く、淋しくなさそうには思えないんだけど。

聞けば聞くほど、イザヤは淋しいヒトじゃない?



「ティガは?何で、イザヤの婚約者の従兄(いとこ)だけが先に来て居着いてるの?リタを連れて。」

質問を変えてみた。

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