ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
「何で?……そうだな。わが家は昔から異国人や異世界人を滞在させることが多いから、あまり考えたことがなかったな。まあ、いいじゃないか。ティガは知識に貪欲でおもしろい男だ。」


イザヤは鷹揚にそう言った。



……やっぱりこのヒト、根っからのボンボンだ。

スタンガン持ち歩いてるヒト達とよく平気で暮らしてるわ。


「リタは?……婚約者さんの縁者って聞いたけど、どうして?」


「あぁ。それは明白だ。我が婚約者どののために、私を見張っているのだろう。」

イザヤはそう言って、鼻で笑った。

「どうせなら色気のある侍女を遣わせばよいものを、あのような髪にして全身で男を拒否してるリタを寄越すとは……プライドの高い女だ。寵を分けるのは我慢ならないと見える。」


……えーと……今のは……?

イザヤは婚約者の身代わりの女を寄越せ、って言ったのかな?


わーーーー。

最低。

男って、マジ、最低。


婚約者さんだって、浮気してるわけじゃなく、大事なお役目で神にお仕えしてるんでしょ?

待っててあげればいいやんか!




「……リタがスタンガンを持ち歩いてるのって、イザヤに夜這いされないようにじゃないの?」 

白い目で見てそう言ったら、イザヤは顔をしかめた。


「違う。私じゃない。……それに、私は女に不自由してない。」


げ!

こいつ、外でやることやってんのか!



じとーっと見ていると、イザヤは的外れな説明をしてくれた。


「リタは今でこそ珍妙な格好をしているが普通に髪を伸ばして着飾れば、婚約者どのによく似た美少女だ。男がほっておかないから、煩わしいんだろ。確か、ティガの片割れが酔ってリタに戯れたのがきっかけだったとか何とか……」


……何?それ。

リタ、そんな目に遭ったの?

レイプされかけたってこと?


……未遂よね?


それで、スタンガンで身を守ってるの?

それで、あの個性的なジャキジャキな短髪と簡素な格好なの?




こみあげてきそうな涙を押さえ込んで、質問を重ねた。


「ティガの片割れって?」


「双子だ。ドラコ。腹が立つぐらい強い騎士だ。各地で手柄を挙げて凱旋し、今や1万の兵士を預かる司令官だ。」

イザヤは、くやしそうにそう言った。


……ティガに対しては鷹揚なのに、同じ騎士のドラコには対抗意識が強いのかしら。

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