ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
……イザヤ、ちゃんと周囲に気を遣ってたんだ。

意外だった。


それに、ティガとリタも……もしかしたら、1人になってしまったイザヤを心配してココにいるのかもしれない。


ちょっとジーンとしてる私を、イザヤが生温かい目で見ていた。


あまり見られると、恥ずかしい……

「あの。さっきのお手紙……」


イザヤの視線のプレッシャーから逃れようと、私はそう口火を切ったけれど、途中で後悔した。

明らかにお仕事の書状なのに、聞いちゃいけなかったかも。



言葉に詰まった私に、イザヤはふっとほほ笑んだ。

「よい。そなたには自由に発言することを許す。……2通とも内容は同じだ。ドラコの軍勢が東の辺境を制圧し凱旋する。出陣の時は素通りだったが、帰りは我が国に寄宿するそうだ。兵士達は城下に宿泊するが、ドラコはこの館に来る。」


ドラコって、ティガの双子の弟で、イザヤの主張ではイザヤと同じぐらい女性にもてるってヒトだっけ。

……でも、確か……リタによからぬことをしたとかなんとか……。



「大丈夫なの?リタが嫌がらない?」


イザヤは肩をすくめた。

「そりゃ嫌がるだろう。先ほどの不敬発言の半分以上は、ドラコのせいだと思うぞ。……そなたは、八つ当たりされたのであろう。」

「……まあ、それならそれでいいけど。リタ、機嫌直ったら、元通り接してくれるかなあ。……せっかく仲良くなれると思ったのになぁ。」


そうこぼすと、イザヤは目を細めた。

「あきらめろ。どうせリタは婚約者どのに心酔している。そなたは、遅かれ早かれ、敵だろうよ。」


……泣きそう。


「敵じゃないのに……。」


そうつぶやくと、イザヤは片頬だけ上げて笑った。

「ああ。敵にはなるまい。婚約者どのとそなたでは、最初から勝負は見えている。婚約者どのには何の興味もわかないが、そなたには興味が尽きない。」

「いや、だから、勝負する気もないってば。」

ちょっとイラッとしてそう言った。


でもイザヤはしれっと言った。

「そなたの心積もりは関係ない。私がそなたを側に置くと決めた。婚約者どのが来るまでは、そなたがこの館の女主人だと振る舞えばよい。」

「ますますリタが怒るわ!」

思わず私が怒ってしまった。


でもイザヤは、クックックッとお腹から笑っていた。


……イザヤ、この状況を楽しんでる?


「ねえ?もしかして、リタとティガを怒らせて、喜んでるの?」

恐る恐るそう聞いてみた。
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