ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
庭に出て、何となく準備体操にストレッチをし始めると、ティガが興味を抱いたらしい。

「それは?何の意味があるのですか?」

「うん?うん。突然、思いっきり身体を動かすと、筋肉やアキレス腱を傷めるかもしれへんから。縮んだ身体を伸ばしてるの。」


ティガはしばらく私を見ていたけれど、そのうち、試してみたくなったらしい。


結果的に、剣術を教えてもらう前に、一通りのストレッチとラジオ体操を教えることになってしまった。


待ちくたびれたリタは、かなりイライラしていた。



この国の騎士の持つ剣は、フェンシングのサーブル、エペ、フルーレとも違った。

日本刀よりまだ細い両刃の剣のようだ。

実用的なレイピアと言ったところだろうか。

鍔(つば)の部分は湾曲してすっぽりと手をガードする形状だ。


「基本的には、突きます。もちろん斬ることもできますが、」


「折れる?」

リタがティガの説明を遮って、そう質問した。


ティガはニコリともせずに恐ろしいことを言った。

「近年の剣は、人間を斬るぐらいでは折れない強度を得ることができました。しかし斬るためには、突くよりも敵に接近する必要があります。特に騎馬戦では敵を斬るのは至難の業。ただでさえ女性のあなたがたは腕が短いのですから、斬り合いは不利ですね。」


「それなら、槍や弓のほうが実用的?」

そう聞いたけど、ティガは淡々と続けた。

「一概には言えません。距離が遠ければ大砲や弓、騎馬戦なら槍、歩兵同士の乱闘では槍よりも剣のほうが有効でしょう。さすがにあなたがたを戦場にお連れすることはないと思いますので、剣術でよろしいかと。」


なるほど。

……大砲ってことは、火薬は実用化されてるのね……。

そういえば、室内灯に火をつけるのに、マッチみたいな棒を使ってた気がする。


スタンガンも作れるなら、どこかには、ライターやチャッカマンもあるかもしれない。


ピストルなんかもあるのかしら?

……暴発しないためのお手入れ、大変らしいけど。



まあ、とりあえずは、剣術よね。



刃を落とした剣を借りて、ティガの言う通りに型を覚える。



「わかったからさ~、とりあえず、やってみようよ。」

型に飽きたリタが、実践形式でのお稽古をしたがった。



「では、私がお相手いたしましょう。」

もちろんリタは私と打ち合いたいのだが、ティガは許さないつもりらしい。
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