ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
そう言ってみたけど、イザヤは折れない。

「まずは楽譜通りに弾けばよい。……では、当面の課題は、この曲を練習すること。それから、先ほどの曲の主旋律の楽譜を起こせ。」


……泣きそう。


宿題を与えられ、私の一日は忙しくなってしまった。

早朝からイザヤとの剣術のお稽古。

イザヤと一緒に朝食を取り、イザヤの登城を見送った後、午前中いっぱいはティガの元でリタと勉強。

昼からは、礼儀作法、ダンス、クラヴィシンの練習……ああああああ!


スケジュール表を作るだけで、煮詰まる!



「大変だね~。」

と、まるっきり他人事のようにからかったリタも、

「礼儀作法はリタも一緒に学びなさい。リタがいつまでも粗野に振る舞っていますと、シーシアさまがこちらに来られた時に恥ずかしい想いをなさいますよ。」

とティガに諭されて、渋々私と礼儀作法を学ぶこととなった。




「まるで貴族のお姫さまを促成栽培するみたい。」

リタがそうぼやく。


「大丈夫ですよ。まいらには既にその素養はあります。リタも、意地を張るのをおやめなさい。かつて学んだでしょう?」

ティガにそう言われて、リタは肩をすくめた。



スケジュール表には入らないけれど、書斎の本も読みたい。

夜には自分の時間がとれるといいなあ。


……どう考えても厳しそうだけど。





夕方、伊邪耶をつれて帰館したイザヤは、玄関先から私を呼びながら部屋へと押し入ってきた。

もう、ノックする必要もないね……うるさすぎ!


「まいら!譜面に起こしたか!?」

頬が紅潮し、テンションが高い。


「おかえりなさい。……できてますよー。テレマンの練習は明日からね。」

私はそう言って、書き上げたばかりの五線譜をイザヤに渡した。


私の弾いた伴奏と、主旋律のメロディーライン。

歌はサビで3つのパートに分かれるんだけど、そこは微妙。

メインボーカルしかちゃんと覚えてないことに初めて気づいた。



「なるほど。……和音があるなら弦楽器のほうがいいな。少し待っていろ。着替えてくる。」

イザヤはそう言って、楽譜を持ったまま出て行った。



……まさかと思うけど……イザヤ、即興で合わせる気?


それに、そんなにいろんな楽器を弾けるの?



半信半疑でクラヴィシンに座り、鍵盤をなぞるように弾いてると、しばらくして、ラフな格好に着替えてイザヤが戻ってきた。


その手に持ってるのは、ヴァイオリン?
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