ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
私は、うなずくことも反論もできなかった。


でも、ティガの綺麗なお顔を悲痛な表情にさせておきたくなくて……たぶんよけいなことを言ってしまった。

「よくわかんないけど、私の世界征服にはティガが必要だと思う。これからもイロイロ教えて。信頼してるから。」


ティガの頬がひくりと片方だけ引きつった。




……すべったな、私。



***


ダンスのお稽古の前に、汗を流したい。



私は午後のお茶の時に、ティガにそうお願いした。

自分の汗臭さが気になって、ティガと組んで踊るのは恥ずかしい気がした。



「では、湖畔の冷泉源に行ってみてはいかがですか?」

「冷泉?温泉の冷たいの?そんなのあるの?近く?」


初耳だ。


「ええ。浜を少し歩くと見えますよ。冷たいというほどではありませんが、熱くもない。冬に入ると風邪をひく程度のぬるさですので、夏場は気持ちいいですよ。今日は暑いからちょうどいいのでは?」


へええっ!


「うれしい!行く行く!温泉大好き。うちも冷泉を沸かしてるの。だから、水道水のお風呂が苦手で。塩素がチクチクして……塩素ってね、腐らない、虫が繁殖しないお薬なの。」


塩素とか絶対に通じなさそうなので、聞かれる前にそう説明した。



「エンソですか。私たちは炭で似たような効果を得ていますが。」

「あ。うん。炭もそうね。併用するよ。てか、塩素臭いのも炭で脱臭できるかも?」


これ以上は聞かないでね、詳しくないから。


そんな想いはティガにちゃんと伝わってくれたようだ。



「レアダンスモレン湖の冷泉源は少し炭酸を含んで赤い水です。美肌にも、傷の治癒にも効果がありますよ。」


へえ!

有馬温泉みたいな感じ?


……てことは、湖底から湧いてたぬるっとした温泉とはまた別なんだ。



「わーい。楽しみ。あ。ねえねえ、こっちって……混浴?」

恐る恐る聞いてみた。


ティガがふっと笑った。

「まいらの国は別浴ですか?こちらは、混在してます。裸で混浴、水着で混浴、別浴。いずれもありますよ。」


「へえ!水着もあるんや。……あ!思い出した!今日、ドレスが届くんやった!」

すっかり忘れてた。

もしかして、もう届いてるかもしれない。



「では、ダンスのお稽古は新しいドレスでいたしましょうか。侍女を呼んで、冷泉源へ案内させましょう。」

ティガはそう言って、立ち上がった。

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