ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
ドラコは苦笑して、ティガの肩を抱くというよりは、もたれかかって、じゃれついた。

「いたいた。でも正規軍じゃない。我が軍が昨年滅ぼしたヴァストークの兵士の生き残りだ。今は、まるで山賊だな。私をカピトーリのドラコさまと知らずに身ぐるみ剥ぐつもりだったようだ。返り討ちにしてやったわ。肉は周辺住民に任せてきた。」


遺体じゃなくて肉なんだ。


ヴァストークは、かつてはこのオーゼラの東隣に存在した国だったっけ。

現在は、カピトーリから代官が派遣されて統治している。




「ドラコは?どうして1人で?1万の軍勢はどうしたのですか?」

ティガは双子の弟にも敬語なのか。



「シーシア……さまが、ユージュナの神殿からカピトーリに一時帰国されるので護衛に加わる。私は早駆けできても、兵に無茶はさせられないので、先に来た。」


かつてユージュナは、カピトーリの南に位置した国だったが、カピトーリの聖地だったため、早くに侵略され、現在はカピトーリの領土だ。

地図で見るとカピトーリの真南にあるのだが、間の山や谷が険し過ぎて通行困難なため、オーゼラを迂回したほうが楽に進行できるらしい。


……てか、イザヤの婚約者のシーシアって、てっきりカピトーリの神宮にいるんだと思ってた。



「ユージュナなんだ。」

何となくそうつぶやいたら、ティガが慌ててドラコを止めた。

「しーっ。シーシアさまの居場所は公表してないのですよ、ドラコ。……まいら。このことは内密に。……イザヤどのにも。」


へ?


「すまない。お嬢さん。いや、まいらどの。また秘密が増えましたな。」

ドラコが見えないと言っていた右目をバチコーンとウインクしてそう言った。


赤みの強いバシバシのまつげの威力がすごくて、私はちょっとクラクラした。



「まいら、と呼んでください。」


ドラコにそう言ってから、ティガに聞いた。


「内緒なの?イザヤにも?……だって、婚約者なのに……?」


「……家同士の取決めとは言え、不幸な(えにし)だな。」

いつまでも鞘におさめられない剣を持て余した様子で、ドラコがつぶやいた。


イザヤとシーシアの婚約は、イザヤやリタだけじゃなく、シーシアの従兄のドラコもよく想ってないらしい。




私は、さっき使わなかった布をドラコに差し出した。

「どうぞ。使ってください。剣、拭かないと錆びますよね。」
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