ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
「ありがとう。」

ドラコは快活な笑顔で爽やかにそうお礼を言って、布で丁寧に剣を拭いてから鞘におさめた。

それから、鎧を回収しに、浴室へと入って行った。




「おやおや。ドラコには、丁寧な言葉を使うのですね。」

ティガが嫌味っぽくそう指摘した。


「え?そう?……そうかも。」

確かに私は、ドラコに対してイイ印象を抱いていた。

「まあ、イザヤは偉そうだし、ティガは優しいふりして私を疑ってたやん?……ドラコは想像と全然違って、まっすぐ、紳士的だったから。」


酔ってリタに絡んだとか何とかって、ちょっと信じられないな。

お酒でヒトが変わるんだろうか。




「なるほど。嫌味には嫌味で返す。無礼には無礼。丁重に扱われると丁重に接するわけですか。まいらのいた世界が階級社会じゃなかったことがよくわかりますね。」

ティガはそう言って、残念そうな表情をした。

「巡り会うタイミングも、立場もまた、神につかさどられているのでしょう。でも、まいら。ヒトは変わります。」


うん。

それも、わかる。


「そうね。鼻持ちならないと思ってたイザヤは案外優しいし、優しいと思ってたティガは意外とシビアだもんね。」

これは嫌味じゃなかった。


でもティガはあからさまに悲しい顔をした。


私は慌ててフォローした。

「いや、あの、責めてないから!てか、ティガも充分よくしてくれてるって知ってるから!……ごめんなさい。正確には、私、ちょっと拗ねてるだけやから。」


「拗ねる?……何に対してですか?」

ティガは心当たりがないらしい。


気恥ずかしいなあ、もう。


「ごめん。ほんとに、ごめん。気にしないで。忘れて。……単に、うらやましいだけ。私には作り笑顔だけど、リタに対しては妹みたいに本当の優しさを感じるから。」


ほぼやけくそでそう言ったら、ティガは一瞬キョトンとして、それから、ふっと表情をゆるめた。

「……そうでしたか。それは気づきませんでした。失礼いたしました。……たしかに、まいらの言う通り、私はリタを妹のように思っているのですよ。」

ティガはそう言って、金色に輝くさざなみを眺めた。



「本当に妹ならよかったのだが……な。」

ドラコが沈鬱な顔で戻ってきた。


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